法人を設立して介護タクシーを始めるには?
介護タクシー事業は、個人事業で開業することが多いのですが、株式会社や合同会社、一般社団法人などの法人を設立して介護タクシー事業を行うこともできます。
法人の中でも選択されることが多いのが、株式会社です。
株式会社は一般に広く認知されていて、起業するなら株式会社と思われる方が多くいらっしゃいます。
実際に開業後に銀行から融資を検討されている方は、株式会社又は合同会社を選択されることをお勧めいたします。
非営利法人である一般社団法人では、融資を受けにくいというデメリットがあります。
それでは、株式会社を設立して介護タクシーの許可を受けるための流れを確認しましょう。
1.株式会社を設立する
介護タクシーの許可を株式会社で申請しますので、まずは会社を設立することから始めます。
株式会社を設立する人を発起人と呼び、発起人が資本金を出資し、株式会社を設立します。
大きく分けて、下記のステップで進めていきます。
- 会社概要を決める
- 定款を作成する
- 公証役場で定款の認証を受ける
- 資本金を払い込む
- 登記申請書類を作成する
- 法務局へ登記申請を行う
STEP1:会社概要を決める
まずは、ご自身が発起人となり、会社概要(会社の基本情報)を決めていきます。
発起人とは、株式会社を設立するにあたって、資本金を出資したり、会社の定款などを作成したりする人のことです。
会社設立後は、その会社の株主となります。
株式会社は、1人でも設立できますので、1人の場合は「発起人(株主)=代表取締役」となります。
- 会社名(商号)
- 場所(本店所在地)
- 事業目的(事業内容)
- 資本金(発起人の出資額)
- 事業年度(決算期)
- 設立時取締役
- 発行する株式数
- 公告方法
介護タクシー事業を行うには、定款の事業目的に介護タクシー事業を行う事を記載しなければなりません。
介護タクシー事業の正式名称「一般乗用旅客自動車運送事業」を入れておくようにしましょう。
以下のページでは、定款の事業目的を定める際に『必要なポイントや注意点』などを具体的にわかりやすく解説しています。
合わせてご確認ください。
介護タクシーの許可を株式会社や合同会社などの会社名義で取得する場合、その会社の事業目的に介護タクシー事業を行うことが記載されている必要があります。 会社の事業目的は、会社を設立するにあたって何の事業を行うのか、具体的に定 …
上記概要を決めたら、定款を作成していきます。
STEP2:定款を作成する
定款とは、STEP1で決めた会社の商号や事業目的、事業年度、設立時取締役のなど、会社概要を記載したものです。
昔は定款を紙で作成していましたが、現在では電子定款で作成するのが主流です。
ただし、電子定款を作成するには電子証明書やICカードリーダライタを用意して、専用のソフトをダウンロードするなど、準備が大変です。
電子定款の作成は、専門家である行政書士へ依頼すると良いでしょう。
定款には会社の根本規則が記載されており、定款作成後は公証役場で認証を受けなければなりません。
発起人が最初に作成した定款のことを「原始定款」と呼びます。
この原始定款は、作っただけでは効力がありません。
法務局の所管機関に所属している「公証役場の公証人」の認証を受けて初めて効力が発生します。
STEP3:公証役場で定款の認証を受ける
定款を作成したら、公証役場へ持参するなどし、公証人に内容について問題ないかをチェックしてもらいます。
公証人は定款の記載内容に法令上の問題がないかなどをチェックし、問題がなければ認証を行います。
発起人の印鑑証明書、実印、認証手数料などを持参して、発起人全員が公証役場へ出向きます。
認証を受けた定款には、公証人の署名(サイン)が入りますので、正しく認証されたことが証明されます。
STEP4:資本金を払い込む
定款認証が終わったら、次は資本金を払い込みます。
通常は発起人が出資する金額の合計額が、設立する株式会社の資本金となります。
発起人が複数であれば、それぞれの出資金の合計額が会社の資本金になるということです。
発起人代表者の銀行口座に、出資者全員が各出資金を払い込みます。
全員の払い込みが終わったら、銀行口座の通帳のコピーを取ります。
この通帳のコピーをもとに払い込みがあったことを証明する「払込証明書」を作成します。
STEP5:登記申請書類を作成する
資本金の払い込みが終わったら、登記申請に必要な書類を作成します。
登記申請に必要な書類は会社の機関構成等により異なりますので、事前に法務局へ確認しておきましょう。
- 登記申請書
- 定款
- 払込証明書
- 取締役の就任承諾
- 取締役の印鑑証明書
- 発起人決定書
- 登記すべき事項
- 印鑑届書
STEP6:法務局へ登記申請を行う
登記書類が書類が揃ったら、会社の本店所在地を管轄する法務局へ登記申請を行います。
法務局へ必要書類を提出した日が、会社の設立日になります。
そのため土日・祝日などの法務局が閉庁している日は設立日とすることができません。
登記を申請してから登記が完了するまで、1週間程度かかります。
法務局から完了の連絡はありませんので、事前にいつ完了するのか法務局の窓口で完了予定日を聞いておきましょう。
無事登記が完了したら、会社の履歴事項証明書(登記簿謄本)を取得しておきます。
2.法人名義の銀行口座を開設する
介護タクシーの許可申請の際に、申請者名義の銀行口座の残高証明書を提出する必要があるため、会社設立後に法人名義の銀行口座を開設します。
銀行口座の開設には、会社の履歴事項証明書(登記簿謄本)等が必要ですので、事前に開設予定の銀行窓口へ問い合わせておきましょう。
都市銀行では口座開設に1ヶ月程度かかることがありますので、前もって準備しておくことが大切です。
3.介護タクシーの許可申請を行う
介護タクシーの許可を株式会社で申請するには、会社の定款や履歴事項証明書(登記簿謄本)等が必要になります。
会社設立中として法務局へ登記申請をする前に、介護タクシーの許可申請を行うことは可能とされていますが、会社設立前に法人名義の銀行口座を開設することはできませんので、会社設立後に介護タクシーの許可申請を行う流れになります。
介護タクシーの許可申請に必要な書類一式を準備・作成して、管轄の運輸支局へ提出します。
介護タクシー許可の申請先は、介護タクシーの営業所を置く場所を管轄する運輸支局です。 運輸支局は、各都道府県に一つあります。 例えば、大阪府内に介護タクシーの営業所を置くのであれば、申請先は大阪運輸支局です。東京都内に介護 …
運輸支局へ申請書が受理されてから申請書類に不備のない場合、定められた標準処理期間(2ヶ月程度)に許可が下ります。
※管轄の運輸局によっては、申請書が受理された後に法令試験が行われます。
審査は公示基準に基づいて行われますので、基準に適合しない場合は却下の対象になります。
申請書類等の詳細については下記ページをご参照ください(地域ごとに異なる場合があります)。
介護タクシー事業を始めるには、運輸局の審査基準を満たす必要があります。 審査基準を満たしているかは、許可申請に関する書面を提出することによって判断されます。 提出先は介護タクシーの営業所の所在地を管轄している運輸支局です …
介護タクシーの許可申請を行う際には、許可申請書と添付書類をあわせて運輸支局の窓口へ提出しなければなりません。この記事では介護タクシー許可申請に必要な書類についてわかりやすく解説しています。
法人を設立して介護タクシーを始めるには?【株式会社編】:まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回の記事では株式会社を設立し、介護タクシーを始めるための流れを解説してきました。
株式会社で介護タクシー事業を始めるには、まず株式会社を設立する手続きが必要です。
定款作成、資本金の払込み、登記の申請等を行います。
次に法人名義の銀行口座開設の後、管轄の運輸支局に介護タクシーの許可申請を提出します。
定款には「一般乗用旅客自動車運送事業」を事業目的として記載する必要があります。
運輸支局の審査は公示基準に基づき行われ、2か月程度で許可が下ります。
その後、営業所設置をして事業を開始します。
上記のような流れで手続きを進めていくことになります。
要点として、下記の点を押さえておきましょう。
- 株式会社設立の手続きを行う(定款作成、資本金払込み、登記等)
- 法人名義の銀行口座を開設する
- 定款に「一般乗用旅客自動車運送事業」を記載する
- 公示基準に適合するよう申請書を作成する
- 管轄の運輸支局に許可申請書を提出する
- 標準処理期間は2か月程度
- 申請後に法令試験がある場合がある
- 許可取得後に営業所を設置し事業を開始する
- 運輸支局の審査は公示基準に基づいて行われる
- 不備がない場合は標準処理期間で許可が下りる
以上となります。
株式会社の設立、介護タクシーの開業をご検討の方はお気軽にお問い合わせフォームより業務のご依頼等、ご連絡くださいませ。