介護保険タクシー許可とは?
介護タクシーとは、体の不自由な方や自力で移動が困難な方が利用するタクシーのことです。
介護タクシーではセダンなどの一般車両とは異なり、多くの場合「福祉車両」と呼ばれる車いす用のリフトやスロープが付いている車を使用しますので、車いすのままでも簡単に乗り入れできるのが特徴です。
『介護タクシー』と呼ばれていますが、これは単なる通称であって、『福祉タクシー』と呼ぶこともあります。
そして、介護タクシーには介護保険が使えるものと、使えないものがありますので、介護保険が適用されるタクシーを『介護保険タクシー』と区別して呼ぶこともあります。
『介護保険タクシー』は、訪問介護事業所や居宅介護事業所が提供する介護保険サービス『通院等乗降介助』を行うタクシーのことです。
まず、介護資格の持ったヘルパーさんが運転して利用者さんの自宅等へ車で迎えに行きます。そして、自宅で着替えなどの外出準備を介助し、タクシーに乗る際の移動と乗車の介助も行います。そして、病院等の目的地まで運転して降車する際の介助と、目的場所までの移動の介助を行います。帰宅時も同じように介助を受けることができます。
この『通院等乗降介助』は、介護保険の対象となるため、利用者は介護保険料の1割(利用者によって2~3割)負担でサービスを受けることができます。
ただし、タクシーの運賃については、介護保険の対象となりませんので、全額利用者の自己負担になります。
つまり、通院等乗降介助は「介助」と「移動」がセットになったサービスであり、介助部分は保険適用、移動部分は保険適用外となります。
とても便利なサービスですが、介護タクシーとは異なり誰でも利用できるわけではありません。
介護保険タクシーの利用者は?
介護保険タクシーの利用者は、要介護1以上の認定を受けている人で、病院への通院等のためにタクシーを使うことがケアプランに組み込まれていることが必要です。
タクシーの利用用途が介護保険の適用外となるような利用の場合(例えば、病院等の目的地以外への移送)や、要介護認定を受けていない人が利用する場合は、介護保険の対象とはならず、全額利用者の自己負担となります。
このように、介護タクシーには介護保険が適用されないケースと適用されるケースがあるため、前者を「介護タクシー」、後者を「介護保険タクシー」として区別して呼ぶことが多くあります。※当サイトでもこの区別を行って解説しております。
介護タクシー・介護保険タクシーどちらも同じ「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」の許可を取得することで、事業を行うことができます。
介護事業の指定を受けている訪問介護事業者又は居宅介護事業者であれば、介護タクシーも介護保険タクシーも両方提供できるので、利用者の対象がさらに増えることになり、事業の幅が広がります。
介護タクシーと介護保険タクシーの違い
■介護タクシー(介護保険適用無)
- 利用者は要支援者、要介護認定、身体障害者手帳保持者等
- ケアプランを作成する必要なし
- 移動先、利用目的に制約がない
- 介助部分、移動部分とも介護保険適用外になるため利用者の全額自己負担
- 利用者以外も同乗できる
■介護保険タクシー(介護保険適用有)
- 利用者は要介護の認定を受けている人
- ケアプランを作成する必要あり
- 移動先、利用目的とも制約あり(受診やリハビリのための通院等)
- 介助部分は介護保険適用になるため保険料の1割負担(利用者によって2~3割)
- 移動部分(運賃)は介護保険適用外になるため利用者の全額自己負担
- 原則利用者以外は乗車できない
介護保険タクシー許可をとるには?
介護保険タクシーの許可申請は、介護タクシーと同じ「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)」許可になります。
許可を受けようとする営業区域(都道府県)を管轄する運輸局に対して、申請書類を提出することにより行います。
介護保険タクシーの許可をとるには、大きく分けて下記6項目の要件を満たす必要があります。
①車両(福祉車両)の要件
福祉車両または一般車両が1台以上必要です。
福祉車両、一般車両とも、「通院等乗降介助」サービスを提供するためには、ヘルパー(介護職員初任者研修)などの資格が必要です。
②人員(運転者等)の要件
車両1台に対して、二種免許を持った1名以上の運転手が必要です。
申請者が二種免許を持っている必要はありませんので、二種免許を持った運転手を雇っても構いません。
③営業所の要件
営業所と休憩・仮眠が取れる施設が必要です。
営業区域内に営業所があり、使用権限1年以上あること、土地建物が関係法令に抵触しないこと、事業規模が適切であることなどの要件を満たす必要があります。
④車庫(駐車場)の要件
営業所に隣接している車庫(駐車場)が必要です。
営業所に隣接していない場合は、営業所から直線で2km以内にあること、駐車するスペースや車庫の使用権限が1年以上あること、土地建物が関係法令に抵触しないこと、前面道路の幅が車両制限令に抵触しないことなどの要件を満たす必要があります。
⑤資金の要件
所要資金の見積りが適切であり、資金計画が合理的かつ確実なものであることが必要です。
「所要金額の50%以上」かつ「事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金」が確保されていることを証明するために、金融機関の残高証明書を提出します。
⑥法令遵守
- 介護タクシー事業の遂行に必要な法令の知識が必要です
申請者は、法令試験に合格する必要があります(法令試験は免除されている地域があります) - 健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険に加入することが必要です
- 申請者が法令遵守の点で問題のないことが必要です(過去に法令違反で車両の使用停止処分を受けたり、交通事故や酒酔い運転等の重大な交通違反がないこと)
- 欠格事由の規定に該当していないことが必要です
介護保険タクシー許可に必要な資格は?
介護保険タクシー許可に必要な資格は、
- 訪問介護事業者または居宅介護事業者の指定を受けていること
- 運転者はヘルパー(介護職員初任者研修)等の資格者であり、「二種免許」を持っていること
です。
訪問介護事業者または居宅介護事業者となるには、都道府県において、人員基準や設備基準を満たした上で指定を受ける必要があります。
尚、介護事業者は法人でなければなりませんので、株式会社や合同会社、一般社団法人等の法人を事前に設立する必要があります。
そして、介護保険タクシーの運転手は、輸送サービスだけでなく訪問介護サービスも行いますので、二種免許と介護福祉士や介護職員初任者研修などの二つの資格が必要となります。
介護保険タクシー許可に必要な資格・まとめ
- 株式会社や合同会社、一般社団法人などの法人であること
- 訪問介護事業者または居宅介護事業者の指定を受けていること
- 運転手は介護福祉士等の資格を有していること
- 運転手は二種免許を取得していること